釣りというのはつくづく「正解がない遊び」だと思います。いや、正解がないからこそ面白いのかもしれません。囲碁や将棋と違い、盤面は常に流動的。相手は自然であり、魚であり、時には自分の心の迷い。今回のブリ釣行も、そんな“迷宮”を歩いてきたような一日でした。
出船できるだけでありがたい日
まず、ここ最近の天気ときたらもう荒れ放題。台風でもないのに、風が強かったり、波が高かったりと、どうにも落ち着きません。おかげで出船を見送った日が何度あったことか。釣り人は魚より天気予報に詳しくなると言いますが、まさにその通りで、毎日スマホの天気アプリと海況情報をにらめっこしていました。
だからこそ、この日は朝から空が穏やか。久しぶりに「よし、今日は行ける!」と心の中でガッツポーズを決めたのです。釣り人にとって“出港できる”というだけで、すでに勝負の半分は終わったようなものです。
なぜか安心してしまう「いつものポイント」
さて、ブリを狙う場合、実は港を出てすぐの場所でも釣れることは釣れるんです。けれども、ついつい足が伸びてしまうのが「実績のある安定ポイント」。これが釣り人の性(さが)というものでしょうか。
もちろん近場にもブリは回遊してきます。年間を通して大型の定置網が近くに設置されていて、そこではブリやマグロ、タイといった高級魚が水揚げされるのですから、魚がいないはずはない。
ただ「釣れた」という報告が少ない。だからこそ、私はいつも素通りしてしまうのです。
新しいポイントを開拓する必要性は重々承知しています。ですが、それには数日間の調査が必要で、船を出して魚探・ソナーを回して、ジグを落として……。そう考えると、どうしても腰が重くなる。「まあ、次の機会でいいか」となってしまうのです。
今回もやはり選んだのは「いつものポイント」。信頼と安心感には勝てません。
複雑怪奇な潮の流れ
釣りは「潮を読む」ことが重要だとよく言われます。この日の潮は大潮。しかも珍しく下り潮でした。
「え? 積丹の東側って基本は上り潮じゃないの?」そう思ったあなた、鋭いです。
実はこれがちょっとややこしい。地図を広げてみると一目瞭然なのですが、石狩湾というのは積丹半島の東側を含む大きな湾。小樽から古平や美国にかけて、地図上では南に位置しているんですね。

さらに、日本海を北上する対馬海流の本流が積丹半島の西岸を通り、岬を回り込んで東岸にも影響を与えます。そのため、基本的には東側でも「上り潮=南から北へ流れる潮」が優勢。
ところが条件が揃うと、下り潮が発生することがあるのです。例えば風向きや潮止まりのタイミングで反転流が生まれるとき。これがまた混乱の元で、「あれ、今日は逆に流れてるぞ?」となる。
この複雑さこそ、積丹の面白さでもあり、難しさでもあるわけです。
タックル迷宮に突入
さて、今回の本題はここから。タックル選びの迷宮です。
ブリ狙いで使うロッドとリール、これがなかなか定まらない。毎回のように「これがベストだ!」と思って挑むのですが、釣り終わると「いや、次は別の組み合わせで試してみよう」となる。そんな繰り返しです。
今回の私の選択肢は2つ。
- ゲームタイプJ S64-3 × ステラSW4000HG(PE1.5号)
- オシアジガーリミテッド S62-4 × ツインパワーSW10000PG(PE3号)
どちらも信頼のシマノ製ですが、使い心地はまるで別物でした。
軽快さが光ったゲームタイプJ
まずS64-3と4000HGの組み合わせ。これが想像以上に快適でした。150gのジグをシャクっても軽快で、操作感がとてもわかりやすい。ファイト時も余裕があり、安心してやり取りできました。
「ジガーより下のランク」と思われがちなゲームタイプですが、実際に使ってみると何の問題もなし。むしろ軽さと操作感の良さではこちらに軍配が上がるのでは、という印象でした。

パワーはあるが重さが気になるオシアジガーリミテッド
一方、S62-4にツインパワー10000の組み合わせ。こちらはパワーも重量も十分。推奨ジグウェイトは110〜240gと幅広く、どんな状況でも対応できる安心感があります。
しかし、今回は150gのジグを使用。PE3号ラインの太さが潮を受けすぎてしまい、思ったようなジャークが難しかったのです。
「これが200g以上のジグならまた違ったかもしれない」そんな感触でした。
釣果を分けたのは操作感
結果としてヒットをもたらしたのは、軽快なゲームタイプJと4000HGのセット。ブリとのファイトもスムーズで、やり取りの安心感がありました。
逆にオシアジガーリミテッドの方は操作感にやや不満が残り、ヒットには至らず。もちろんこれは状況次第。潮の速さやジグの重さが変われば、逆の結果になる可能性も大いにあります。
オシアジガーリミテッドは高強度・高弾性素材M40Xを採用しているので、高弾性でシャキッとしています。スピニングにはこの高弾性がとても相性がよく、ドテラでやる私にはいい相棒なんですけどね。こと4番パワーはブリには相性は悪そう!
ただ、これからも試行錯誤をしていく中で違う答えがあるかもしれません。
リールは本当にSW機が必要か?
ここでひとつ面白い発見がありました。ブリクラスを狙うのであれば、必ずしもSW機(ソルトウォーター専用機)である必要はまったくないのです。
今回もステラSW4000HGを使いましたが、実は汎用機の4000番でも十分対応可能。特に潮が緩やかで200g未満のジグなら全く問題ありません。
私の船に乗るゲストの中にも、汎用リールで普通にブリを釣り上げている方が多い。高価な専用機が必須というわけではないんです。
私のおすすめはストラディック4000番のノーマルギアです。XGを選びたくなるとは思いますが、最終的に行き着いたのはHGが良いというのが数年前から行き着きました。ストラデックも4000HGがあるにはあるのですけど、MHGで糸巻き量が少ないのが欠点です。どうしてもという方は4000MHGを購入し、替えスプールを4000か4000XGのを使えばハイギアを使えます。
でも、だったらストラデックSW4000HGが価格的には少し高いですが、耐久性や防塵性もアップしています。長く使えるリールは間違いありません。重量は重い25gプラスの300gです。
私も汎用の4000番はいまだに使っていますが価格からいうと申し分ないリールだと思っています。もちろん上位機種を選べる予算があれば上の方が細部まで素材などをこだわっているのでステラを超えることは全くないです。
ステラSW4000HGは重量もずっしりと355gとずっしり重い感じではあります。最近は感覚がバックてまして、355gは軽量に感じてしまうくらいです。18000番を普通にキャストしているとそんな感覚になってしまいます。
ラインの太さが釣果を分ける
忘れてはいけないのがライン選び。太ければ安心感はありますが、その分潮の抵抗を受けやすくなり、ジグの動きが鈍くなります。
今回のようにPE1.5号とPE3号を使い比べてみると、その差は歴然。軽快な操作感を重視するなら細め、パワーを重視するなら太め。ここも結局は「状況次第」という迷宮に迷い込むことになるのです。
リーダーは試行錯誤中です。各メーカーの使っています。これといった答えは未だに出ていません。
結論は「まだ正解はない」
釣行を終えて思うのは、やっぱり「これが正解!」という組み合わせはまだ見えてこないということ。
ただひとつ言えるのは、今回のS64-3と4000HGの組み合わせはブリジギングにおいてかなり快適だった、ということ。これが新たな“マイルール”になりそうです。
そしてもうひとつ。どんなにタックルを悩んでも、最終的には「出船できるかどうか」が一番の問題。天候には勝てません。
釣り人は永遠の研究者
最後に。釣り人というのは永遠の研究者です。
「このジグがいい」「このラインがいい」と言いながら、次の釣行ではまた別のタックルを試している。これは決して優柔不断なのではなく、好奇心と向上心の表れなのです。
私も今回の釣行でまた一つ新しい発見をしました。そして次は「もっと重いジグで試してみよう」「細いラインでもう一度やってみよう」と、すでに頭の中では次回の実験計画が立っています。
釣りの楽しみは魚を釣ることだけではありません。こうして悩み、迷い、試行錯誤することこそが最大の魅力なのです。
まとめ
- 出船できただけで幸せ。
- 潮の流れは複雑怪奇。
- タックル選びは迷宮。
- 軽快さならゲームタイプJ、パワーならジガーリミテッド。
- ブリなら汎用リールでも十分。
- ラインは太さで操作感が変わる。
結局のところ、正解はひとつではありません。むしろ「正解がないこと」が釣りの面白さ。だからこそ、また竿を持って海に出るのです。
豆知識
戻りブリとは?
- 夏に北海道・東北北部まで北上したブリが、秋にかけて南下しはじめた個体を指す。
- 東北日本海側(青森〜秋田〜新潟)あたりでよく使われる呼び方。
- 南下途中なので体力を蓄えていて、脂が乗り始めている。
- 時期は 9〜11月頃。
寒ブリとは?
- 南下の最終段階、特に 富山湾・能登半島周辺に集まったブリを指す。
- 水温が下がる12月〜2月に漁獲され、最も脂が乗っている状態。
- 富山湾では「氷見の寒ブリ」がブランド化されており、産卵前の極上の味として有名。