釣りを長くやっていると、自分だけが知っているような「隠れポイント」を誰しも一つや二つ持っていると思います。そこはごく親しい人にだけ教えたり、あるいは徹底して単独釣行にこだわったりと、人それぞれの考え方がありますよね。
釣りを一緒に楽しむ醍醐味は、やはり釣れた時の喜びを仲間と共有できることです。魚とのファイトそのものは本人にしか分かりませんが、その様子を間近で見るだけでも楽しいものです。時にはバラすこともあり、また見事キャッチできることもあり、その一喜一憂こそが釣りの魅力でもあります。
しかし、信用できる仲間にだけこっそり教えたポイントが、そこから情報が漏れて有名スポットになってしまうことも珍しくありません。特にSNSなどで場所が公開されると、あっという間に多くの人が押し寄せてしまいます。良いポイントを取るために、早朝5時の釣りを目指して前夜の午後10時には現地入りしなければならないということもあるようです。特に若いアングラーは行動力があるので、そのような傾向が強いかもしれません。
そういった行動の理由も十分に理解できます。釣行できるのは月に一回二回がやっとという人も実に多いと思います。仕事やプライベートでなかなか時間が取れない中での釣りですが、確実にキャッチしたいと思うのは当然ですし、一等地はタイミングが良ければ釣れる確率が大幅に上がるでしょう。ただし、もう一段ステップアップしたいのであれば、一本釣った後が大切になります。
二本目を狙う時には、ルアーを変えたり、アクションを変えたり、キャストの方向を変えたりして、自分なりに状況を分析することが重要です。人の意見はあくまで参考に過ぎません。自分で考え、独自のやり方を見つければ、それはあなたのスキルになります。風向きや水温、潮の流れ、ヒットした時間帯などをメモしておくと良いでしょう。スマホを使って音声入力で記録して後で聞き返すのも効果的です。そうして自分だけのマニュアルを作り上げていくのです。
たとえ釣れない日でも、必ず記録しておくことが非常に重要です。釣果が出ない日こそ、実は貴重なデータが得られるのです。同じ場所へ何度も通う必要がありますが、蓄積されたデータはやがて貴重な資産になります。しっかりとしたデータを作り上げれば、さまざまな状況に対応できる範囲が広がることは間違いありません。
ただ、一等地だからといって必ずしも釣果が出るわけではありません。また朝マズメの時間帯にしか釣れないということでもありません。魚種によって傾向は異なりますし、潮の流れや風向きなど、状況に応じて釣れるポイントは常に変わります。そのため、入釣前に状況をしっかりと確認し、その日のベストポイントを見極めることが非常に重要になります。
例えば磯釣りの場合、岬状に突き出たポイントが三つあるとすれば、最も沖に出っ張った磯に入るのがセオリーですが、実際にはそれ以外の場所でよくヒットすることも多々あります。釣果を上げるためには、自ら足を運んで実際に経験することが何よりも大切なのです。
磯釣りやオフショア経験が豊富な方ならご存知だと思いますが、一見何の変哲もない場所に漁師の網が仕掛けられていることがあります。「こんな所に?」と思うような場所でも、実は長年の経験から魚が集まりやすいと分かっているのです。漁師が網を入れている場所は、まさに「鉄板」の実績ポイントと言えるでしょう。
つまり大事なのは、自分の目で確認し、実際に経験することで知見を広げていくことです。釣りのスキルが向上すれば、それは他の釣り場や別の状況にもきっと役立つはずです。
私自身は、長年の釣りデータをGoogleドキュメントで保存しています。データは嘘をつかず、真実だけが文字として残ります。たとえば「2年前の今日は釣れていたから、今日は行ってみよう」といった判断ができます。友人から得た情報と自分のデータが一致するときは特に精度が高くなります。
意外にデータが少ないのは釣れた日で、むしろ釣れなかった日のデータの方が多く、自分自身がその日に感じたことが詳しく記録されています。場所を絞り込めるようになると、天気予報で風向きを確認して大体の目安をつけ、現地で最終判断を行います。ポイントに着いたらいきなりキャストするのではなく、まずは状況をよく確認することが重要です。
また、安全確認も必ず行いましょう。ランディングポイントを確認するのは当然ですが、私はさらに「万一落水した場合の上陸地点」も必ず確認しています。もちろん落水しないことがベストですが、事故は誰にも予測できません。
落水などの事故は想定外だからこそ、実際に起きた際にパニックに陥りやすいものです。パニックを避けるためにも、事前に「もしも落水したらあそこから上がろう」と決めておくことで、いざという時に比較的冷静に行動できるはずです。幸い私はまだ落水の経験はありませんが、初めて行く場所では必ず安全確認を徹底しています。