あっという間の3日間が過ぎ、ついにドリームツアーの最終日を迎えました。今回の釣行は、朝9時には終了する予定のため、実質4時間ほどの短期決戦。飛行機の都合もあり、この時間内に全力を出し切る必要がありました。最終日でしかも朝イチ勝負。これまでに釣果を出せていなかった私にとっては、まさに背水の陣ともいえる状況でした。
午前5時前、まだ薄暗いなかで見島を出船。ポイントまではおよそ40分。移動中、頭の中では昨日の後半のシーンが何度もリフレインしていました。あと一歩で釣果に届かなかった自分に、今日はどんなチャンスがやってくるのか。昨日の後半に信じたルアーとタックルをそのまま使うことを決め、ルアーチェンジはあえてしませんでした。自分の感覚を信じ、最後まで貫くことにしたのです。
現地に到着すると、海況はやや波があり、決してベストなコンディションではありませんでした。ただ、空は快晴で一般的には「釣り日和」とも言える気持ちの良い朝。どこかで「今日こそ出る気がする」という直感のようなものが働いていました。
キャストを始めてすぐ、わずか3投目。ルアーの背後に不穏な気配を感じました。海面の揺れ、何かが接近している波動。昨日の失敗が頭をよぎります。思わず動きを変えたくなりましたが、同じリズムをキープ。ルアーの挙動を崩すことなく丁寧に引き続けていたその時、海面が割れ、魚体が飛び出しました。
まさに上から抑え込むようなバイト。派手な捕食シーンのわりに、最初はしっかりフッキングしたかどうかが分かりませんでした。しかし、コンマ秒後にずっしりとした手応え。ようやく魚が乗っていることを確信し、全神経を集中してフッキング。一気にロッドが絞り込まれ、ファイトに突入です。

ファイトの最中、正直なところ時間の感覚はありませんでした。感覚としてはそれほど長くはなかったと思いますが、全身に力が入り、集中力も極限に達していたように思います。潮下へ誘導し、無事にランディング成功。ようやく、ようやく釣ることができた——。体から力が抜けるような安堵感に包まれました。
「やった……ついに釣れた!」
そう思ったのも束の間。釣り上げた魚を見て、周囲がざわめきました。

なんと、釣り上げたのは「ブリヒラ」でした。ブリとヒラマサの交雑種で、体高のある力強い魚体。そのサイズは堂々の16kg。しかも、この個体は非常に希少で、宮崎大学が研究対象として調査を行っているとのこと。タグを取り付けて再放流し、半年後にその行動データを取得するというものでした。
魚体にダメージがなかったこともあり、快く協力を承諾。私が釣った魚が研究に役立てられることになるとは、まったく想像していなかった展開です。釣果という成果を超え、科学的な価値にも繋がる釣行となり、嬉しさと誇らしさが入り混じった瞬間でした。
しかし、時間は刻一刻と過ぎていきます。残された時間で、どうしても「本命ヒラマサ」を手にしたいという想いが強くなりました。ブリヒラを釣ったことの充実感と同時に、「ここで終わるわけにはいかない」という気持ちが背中を押します。
タックルを握り、再びキャスト。何度もルアーを通すなかで、ふたたび波紋がルアーの後方に広がります。そして——バイト!
今度は慌てることなく、落ち着いてリールを巻きながら魚の動きに合わせてフッキング。確かな手応え。前回よりもさらに冷静にファイトを展開。魚は最後の方で強烈に下に潜りましたが、ここは水深45mあるので余裕を持って対処できました。
そして、無事キャッチ成功。
その魚こそが——ヒラマサ!

サイズは8kgと小ぶりでしたが、北海道に住んでいる私にとっては非常に貴重な魚です。正直、ヒラマサに出会う機会は寿司屋さんくらいしかなく、現場で手にした感動はひとしおでした。船長のすすめもあり、この魚は持ち帰ることにしました。サイズ的にも荷物で持ち帰るには程よいサイズ、空港までは車で来ているのでそのまま運べます。

こうして、シマノドリームツアーの最終日、私は2本の魚と出会うことができました。ブリヒラという偶然の出会い、そして念願のヒラマサ。どちらも、この場にいなければ手にできなかった魚たちです。
今回のツアーでは、プロのインストラクター、船長、そして全国から集まった参加者たちと共に、同じ船で、同じ海を共有できたことが何よりの財産です。そして、釣り上げた魚は、私ひとりの力ではなく、多くの人の支えがあってこそ出会えた1本だったと心から思います。
疲れは最高潮で、体はボロボロではありましたが大好きな釣り、初物ばかりだったので「夢のような時間だった」と、時間を経ても変わらずあります。
今回、使用したルアーはツアー用に購入し持ち込んでいたルアーに鈴木斉さんのサインをいただきました。

釣果はもちろん大切ですが、それ以上に、釣りの奥深さや人とのつながり、そして海と向き合う時間の尊さを実感できた3日間でした。鈴木斉さん、寺戸船長、シマノの山口さん、カメラマンの3名の方、一緒に当選した、秋田のAYAKAさん、ツアーを運営してくださったスタッフの方々、皆様に心から感謝を申し上げます。
この経験は、間違いなく私の釣り人生の中でも“自慢の一頁”となるでしょう。

本当にありがとうございました。