はじめに
釣りという趣味は「竿を出して、魚を釣る」行為だと思われがちです。しかし、マグロゲームを追い続けてきて強く感じているのは、釣りとは準備であり、釣行はその答え合わせにすぎないということです。
今回は、積丹沖のクロマグロをターゲットに据えたライン交換作業と、そこに込めた考え方、準備の裏側についてご紹介していきます。
クロマグロのサイズが変わってきた積丹の海
昨年、積丹沖のクロマグロゲームは大きく様変わりしています。私がこの海で本格的にナブラ撃ちを始めた頃は、10kg〜40kgクラスがアベレージサイズでした。もちろん、それでも40キロなら十分に強烈で、なんじゃこの引きは〜と一気に魅了されていきました。40kgクラスならPE6号のタックルで問題なく対応できていました。
ところが昨年あたりから、明らかに大型化が進んできたと感じています。遊漁船の船長さんとの会話でも「70キロクラスが目立ってきた」という情報を何度も耳にしました。中には90kg台の情報や、100kgを超えたという話も出てきています。
もともとマグロはナブラにキャストしてヒットさせるまでは、ある意味で比較的簡単とも言われます。ナブラさえ出ていれば、正しいコースにルアーを投入すればバイトは出ます。ど真ん中はだめですよ。問題はヒットした後に始まります。
魚のサイズが50kgから70kg、80kgへと大型化してくると、ライン強度やドラグ設定、巻き取り速度、耐久力のすべてが試される世界になります。
この現実を踏まえ、今回のラインセッティング変更をしました。
PE6号からPE8号への移行
これまでは長らくPE6号(300m巻き)をメインラインとして使用してきました。近年はオシア8のPE6号で、最大強力は約51kgあります。今まで高切れやラインブレイクを経験したことはありません。
しかし、大型化するマグロに対して「これまで大丈夫だったから今年も大丈夫だろう」という考え方は危険だと感じています。むしろ、想定を超えた個体がヒットした場合に備える準備こそが釣り人の責任であり、成長だと考えています。
今回の変更は以下の通りです。
- リール本体:シマノ ステラSW 14000XG
- 旧ライン:PE6号(300m)
- 新ライン:PE8号(225m)
PE8号に上げることで最大強力は68kg超となり、より大型への対応力が高まります。もちろんラインキャパは減少しますが、私のスタイルでは「ファーストランをどこで止めるか」を常に想定しています。ドラグ設定や船の追尾、ファイトポジションを含めたトータルコントロールを行えば、十分に戦えると判断しました。ワンハンドでも戦う自信はあります!
短くなっても良いという理由は今までも説明した「日本海冷水層」があるからです。
https://syabero.com/bluefintuna-250624/
明らかに大型化が見えている場合は、大きさによって10号タックルを投げるでしょう。
自分でラインを巻く理由
今回もラインは自分自身で巻きました。私はこれまでずっと「ライン巻きは自分で行う」ことを徹底しています。その理由はとてもシンプルです。
責任はすべて自分が負うべきだと思っているからです。
もしライン巻きにムラやねじれがあれば、ファイト中にライン食い込みや偏りが発生した場合に「ショップに巻いてもらったからだ」と言い訳をするのは、釣り人として最も避けたいことです。釣りは準備段階からすでに勝負が始まっており、そこでのミスを他責にしてしまうのは良くないと思っています。
自分で巻けば、その巻きテンションや巻き姿、その日のコンディションのすべてを把握できます。仮にトラブルが起きたとしても「自分の準備不足だった」と素直に受け止めることができ、それが次の成長へとつながっていきます。
スプール調整という神経戦
実際に巻いていくと、すぐに課題が出てきました。PE8号は6号に比べて太く、ラインが逆ハの字になってしまいました。これはライン巻き作業ではよくある現象ですが、放置するとライン放出時の抵抗やライントラブルの原因になってしまいます。
そこでワッシャー調整を行いました。逆ハの字はワッシャー追加、ハの字はワッシャー外し
1枚、2枚と厚さ0.1mm単位でワッシャーを追加しながら、巻き姿が理想的になるまで微調整を繰り返しました。デジタルノギスを使って厚みを管理しながら、地味ですが神経と体力を使う工程です。
ワッシャー追加後に一旦、50mを巻いて様子を見ます。だめであればもう一度ワッシャーを追加して、またラインを巻くこの繰り返しです。
「ラインはただ巻けばいい」という考え方は、マグロゲームでは通用しません。
スプールエッジまで均等にラインを詰め、巻きムラをなくすこと。これがファーストランで80mから120mを一気に引き出されるクロマグロ戦において、致命的な差につながってくるのです。
すべては”千載一遇”の魚のために
マグロは相手を選べない釣りです。10kgがヒットするかもしれませんし、いきなり80kgが来る可能性もあります。その時に備えるのが準備の本質だと考えています。
もし70kgオーバーがヒットしても、ライン強度・ドラグ設定・タックルバランスが整っていれば、あとは焦らずに対応できます。そういった準備が積み重なって、千載一遇のビッグチャンスを活かすことができるのだと思います。
「準備こそが釣りであり、釣行は答え合わせ」
私はこの言葉をずっと大切にしています。
経験値は試行回数に比例する
準備には、当然ながら仮説と検証が必要になります。
- 想定する海域
- その日の天候・風・潮
- ベイトフィッシュの動向
- 潮色と水温
- ナブラの出現傾向
- 他の遊漁船からの情報
これらすべてを総合的に考え、毎回少しずつ仮説を立てて釣行に臨んでいます。そして釣行当日には、現場でその仮説が正しかったのかどうかを答え合わせするのです。
間違っていれば修正し、正しかった部分はさらに精度を高めます。その繰り返しこそが「経験値(経験度数)」を積み重ねる唯一の方法だと思っています。
〜シーズン開幕に向けて〜
積丹のマグロゲームは間違いなく進化しています。魚も大型化し、釣り人側の準備も年々アップデートが求められています。
- タックルセッティングの再検証
- ラインキャパと強度のバランス
- 自己責任のライン巻き作業
- ワッシャー調整による細かな仕上げ
- 現場での柔軟な判断力
- リリース手順
これらすべては、「その1本」に出会うための準備であり、真剣勝負そのものです。
今年も積丹の海で、どんなナブラが待っているのか。どんなビッグファイトが訪れるのか。
すべては準備を積み重ねた先にしか、最高の瞬間はやってこないと信じています。
——積丹クロマグロ2025、いよいよ開幕です。