前回の記事で、「ちっこい魚を細い仕掛けで釣るライトゲームこそが、実は最高峰のスリルと技術を要求される真のビッグゲームである」と書きました。
今回は、私が普段地元の防波堤で実践している「100gのターゲットに対する究極のライトゲーム」のリアルな情景と、そこに持ち込む”少し面倒なこだわり”について、すべてを語ろうと思います。
「たかがガヤ(エゾメバル)でしょ?」と侮ってはいけません。ここには、50kgのマグロを追うのと同じくらい、深く、ヒリヒリするような極限のゲームが存在するのです。
タックルへの異常な愛。1000番ボディのステラと、機内に忍ばせる相棒
まずは、私がこの極限のゲームに持ち込むタックルについてお話しさせてください。 ライトゲームにおいて、「軽さは正義」です。
私が愛用しているのは、シマノの『ソアレ エクスチューン MB S76UL-S』というアジング・メバル用のモバイルロッドです。万が一、不意の少し大きなターゲットの可能性がある時は『ワールドシャウラ ドリームツアーエディション』も使います。どちらも仕舞寸法は50cm前後のパックロッドです。
なぜモバイルロッドなのか? それは、出張で飛行機に乗る時、機内持ち込みの荷物の中にこっそり忍び込ませるためです。「せっかく行くなら」と出張を1日延ばし、その土地のターゲットを釣る。これも日本人の悪い癖かもしれませんが、私の密かな楽しみなのです。
そして合わせるリールはステラ。ですが、ただのステラではありません。 多くの人は「C3000」や「4000」といった番手を気にしますが、私は「ボディサイズ」に異常にこだわります(笑)。
私が使っているのは、1000番の極小ボディにC2000番のスプールを入れた仕様(C2000S)です。汎用ステラでも重量はわずか170g。こだわらない人からすれば「おもちゃみたい」な軽さでしょう。私は歴代のスペック表をスプレッドシートで緻密に管理していますが、この「1000番ボディの圧倒的な軽さ」こそが、PE0.4号を使った100gのターゲットとのヒリヒリする戦いにおいて、絶対的なアドバンテージになります。

シマノ信者の私が選ぶ、絶対的エースはダイワの『夜霧』
ブログを読んでくれている方は「こいつはシマノ信者だ」と思っているかもしれません。確かに絶大な信頼を置いています。 しかし、ことライトゲームのプラグに関しては、シマノには悪い癖があります。色々出すのは良いのですが、初期ロットで売れないとすぐに廃盤にしてしまうのです。アーマージョイントなどは面白い動きをしますし、「釣れたら素敵だな」というロマン枠として楽しんでいますが、いつまでラインナップに残るかは分かりません。

そんな忖度なしの私が、数あるルアーの中から探し当てた「最も釣れるライトゲームのプラグ」があります。
ダイワの『夜霧Z』です。

夜の防波堤でガヤを狙う時、このちょっとグロー(夜光)が入った夜霧が、本当に、恐ろしいほど釣れます。
真っ暗闇の防波堤に着いたら、私はすぐに竿を振りません。まずはロッドを置き、10分間ただ座って、静かに耳を澄まします。
波の音しかしない静寂の中で、しばらくすると「パシャッ」「ポシュ」というライズ(魚が水面の餌を捕食する音)が聞こえてきます。実はこれ、オフショアのビッグゲームで、自分の背後で鳴るライズ音の気配で海の状況を察知するのと同じ感覚なのです。
目視できない暗闇の中で、音だけで「そこだ」とターゲットを絞り込み、この夜霧を撃ち込む。これがたまらなく面白いのです。
視覚ゼロ。真っ暗闇のトップウォーターで研ぎ澄まされる「人間レーダー」
ライズの音が聞こえたら、いよいよキャストです。 真っ暗闇なので、ルアーがどこに落ちたかなど一切見えません。ですが、音を聞き続けることで、人間は不思議と「レーダー」のように感覚が研ぎ澄まされていきます。

「あ、今のライズ音は右斜め45度、ちょっと手前だな」と。
最初は月明かりのある夜に「音」と「実際の距離」の答え合わせをしておくと良いでしょう。慣れてくると、真の暗闇でもピンポイントで投げられるようになります。人間の感覚というのは本当に恐ろしいものです。
そして、誘い方は至ってシンプルです。 変なジャークやトゥイッチなどは入れません。ただ巻いて、止める。巻いて、止める。これの繰り返しです。結果的にこれが一番釣れます。
視覚が完全に奪われた状態で、指先に伝わるラインのテンションと、ルアーの重みだけに全神経を集中させます。 そして「バシャン!」と水面が割れ、手元に「ゴンッ!」と重みが乗ります。ヒットした瞬間の重みで「お、これは15cm超えてるな」と分かるようになれば、あなたも完全にこの極限ゲームの沼にハマっている証拠です。
命を粗末にするな。外道「ガヤ」の美味さと釣りの原点
最後に、北海道における「ガヤ(エゾメバル)」について言っておきたいことがあります。
北海道では、ガヤは「外道のさらに下の外道」のように扱われることが多いです。 防波堤に行くと、釣れた小さなガヤを海に返すこともなく、コンクリートの上にそのまま放置して干からびさせたり、酷い時にはコンクリートにぶつけて殺すようなマナーの悪い人間を見かけます。年配の釣り人に多いのですが、本当に見苦しく、気分が悪いです。
私は、どんなにその場所が釣れるポイントであったとしても、そんな命を粗末にする人間の横では絶対に釣りをしません。
確かに10cm程度のガヤは食べるのには向きません。しかし、18cm〜20cmを超えるサイズになれば話は全く別です。本州で珍重されるメバルと同じ「エゾメバル」なのですから、美味しくないわけがありません。
少し捌くのが面倒かもしれませんが、しっかり血抜きをして持ち帰れば、コリコリとした食感と強い甘みを持つ極上の刺身になります。もちろん、焼いても煮付けても最高です。
釣りの原点は、「自分で釣った魚を、自分で調理して食べる」ことにあります。 ガヤは、やり方さえ間違えなければいくらでも釣れる魚です。だからこそ、命を粗末にせず、食べる分(1匹でもいい)だけを持ち帰り、一度騙されたと思って本気で味わってみてください。
50kgのマグロに挑むのも、真っ暗闇で100gのガヤのライズ音に全神経を集中させるのも、アングラーとしての「真剣勝負」の熱量は全く同じなのです。
